007:みえない
あいつ……電話ぐらい寄こせっての…。
サンジとは、もうどれぐらい会ってないのか……1週間、経つのか。
何でも、店が忙しいらしい。
朝早くから夜遅くまで。家に帰れば寝るだけの生活。疲れも取れぬまま、次の日また出勤するのだろう。
……分かってる、ただのわがままだ。
根っからの料理好きだ。今だって、忙しいと言いながら厨房で楽しげに手を動かしていることだろう。
料理をするあいつは、好きだ。
いきいきしてるし、見てて飽きない。
でも……。
1週間、会っていない。電話も、一切してない。
かけてくるのはいつもサンジ。俺から電話をする比率の方が断然少ない。
たまには、いや、こういう時こそ俺から行動した方がいいんだろうか……しかし、忙しかったら……。
などと迷いながら、アドレスを呼び出すものの、結局最後のボタンを押せないでいる。
どうせ連絡したって繋がらないし、繋がったとしても忙しいと言われるだろうし…。
すぐ切られてしまうくらいなら、かけない方がいい……。
携帯を開いたり閉じたりしながら、時間だけが過ぎて行った。
かけようか止そうかひたすら迷っていた、その時。
びくっと体が強張る。
手の中で、突然携帯が震えはじめたのだ。
恐る恐る開いてみる。
サンジ
名前が、表示されている。
メールじゃない。メールなら、すぐにバイブレーションが切れるように設定してある。
……着信だ。
驚きと緊張で手が震える。
タイミング、良すぎるだろ?
しかし、嬉しさが勝った。出ないなどという選択肢は当然ない。
通話ボタンを押す。
『よぉ、ゾロ?久しぶり!』
「……ああ」
なんだか、懐かしいような気がする声。
たった1週間だったのに。
『あれ?元気ない?』
「……んなコトねぇ」
お前、何でそんなに元気なんだよ。
『……なあ、やっとさ、仕事がひと段落ついたんだ』
「……ああ」
『やっと、お前に会える』
あぁ、それでそんなに…。
『嬉しいよ』
俺もだ。
『早く会って、お前と話したいよ』
「ああ」
『お前に、触れたい』
「……ああ」
『ねぇ、俺がいない間、どうしてた?』
「あ?」
『ひとりで、エッチなコトしてた?』
「ばっ…何てこと聞くんだよっ!」
『ねえ、ゾロ?』
耳元で、あの低い囁くような声が聞こえる。
甘い甘い、俺を惑わす声……。
「して、ねェよ」
『ホントに?』
「ああ。……お前がいねェのに、ひとりでしたって虚しいだけだろ」
『うわぁ、俺、今お前に抱きつきたい』
「できるもんならやってみろ」
『ちぇっ、つまんねぇの』
「……なぁ、いつ会えんだよ」
『お、ゾロからそんなこと言ってくれるなんて、嬉しいねぇ』
クククっと笑う声がする。
顔が見えないせいか、余計にヤツの声を追ってしまう。
あいつがどんな顔をしてるか、想像してしまう。
『ねぇ、今しようか?』
「あ?何を」
『セックス』
かぁっと、顔が熱くなる。コイツは一体何を考えてんだ。
「できるわけねェだろ」
『それができるんだな』
ったく、何てやつだ。そんなにシたいのか。
『ねぇゾロ、俺の声をちゃんと聞いてね』
何を始めるのか知らないが、黙ってヤツの声を聞いてやる。
……俺だって、溜まってんだ。
『今、どこにいるの?』
「部屋。布団の上」
『お、ばっちり!ヤる気満々だね』
「たまたまだろ。んで?それがどうした」
『ねぇ、もう勃ってる?』
「は?まだに決まってんだろ?」
『でもほら、触ってみな?……熱いだろ?』
言われるままに、手が股間に伸びていく。
布越しに伝わるものは、すでに意外なほど熱を孕んでいた。
息を飲む音が聞こえたのか、いやらしい声が耳元で聞こえる。
『ほら、ね?』
うるさい。
言いたかったけど、俺は熱を撫で上げることに必死になっていた。
あいつと会ってないのは1週間だが、ヤったのはすでに10日前だ。そりゃ溜まる。
布越しの感覚がもどかしい。
『どう?直接触りたくなってきた?』
にやけた顔が目に浮かぶ。…なんか、ムカつく。
俺は、ヤツの言葉など無視して、さっさとズボンを引き下ろした。
直接触れたそこは、すでに欲望が形となっていた。
「…ん…っ…」
ゆっくりと、自分のそれを上下に扱きはじめる。
久しぶりの感覚に、背筋に電流が走った。
『あ、コラ、誰がもう直接触っていいなんて言った?』
びくんと、手が止まる。……なんで、分かんだよ…。
『分かるよ、お前のことだもん。しょうがねぇな。そのままゆっくり手ぇ動かしな。お前のことだ、左手だろ?』
……だから、何で分かんだよ。心の中で反論しながら、左手の動きを再開する。
『右手、余ってるだろ?シャツ捲って、お前のそのぷっくりと立ってる乳首も可愛がってやんな』
いちいち言葉で煽ってくる。やはり、うるさい、と思いながらも、携帯を肩で支え、俺の右手はシャツの中へと伸びていった。
「あっ…」
以前はこんなところ、何も感じなかったのに…。
今だって、自分でやっても気持ちいいだなんて思わない。
だが、それがサンジの手だと想像した瞬間、何かが弾けた気がした。
意識が、朦朧としはじめる。
『どう?良くなってきただろ?ほら、下ももうドロドロ』
目線を下にやると、サンジの言うとおり、先走りがどんどんと溢れ出ていた。
生々しい液体が竿を伝い、すでに後ろにまで達していた。
「あっ…サンジ……」
『ん?どうした?』
一度快感を覚えてしまった体はそれを求める。
無意識に腰が揺れ、後ろの穴がひくひく動いているのがわかる。
………欲しい。
「サンジ………」
『いいよ、触ってあげる』
耳元で聞こえる声は、目を瞑るとまるでそこにいるかのような錯覚を起こす。
『左手でゆっくりと、下に向かって辿っていくんだ。そう、ゾロの一番気持ちいいトコ。そこ、好きだろ?』
サンジの声に操られるように、俺の手は下へ伸びる。
物欲しそうにヒクヒクと動いているそこに手を這わせ、円を描くように撫ぜる。
『もうぐちゃぐちゃ?すぐに入っちゃうんじゃない?』
サンジの声をもっと聞きたくて、シャツの中で蠢いていた右手を抜き取り、しっかりと携帯を持ち直す。
仰向けに寝転がり、膝を立てると、サンジに触れられているような気がした。
『1本、中に入れてみようか。…そうだな、中指がいい。一番長くて、奥まで届くからね』
先走りを指に絡め、言われるがままに中指を立てる。
つぷっと、ほんの指先だけ入れると、ナカの熱さに驚いた。
『ゾロの中、熱いだろ?もっと堪能したいな。ゆっくりでいいから、進めてごらん』
初めて触れた自分の中はとにかく熱く、きゅっと己の指を締め付ける。
ふいに、恥ずかしい格好をして自慰をしていることに気づき、緊張で体が動かなくなる。
「あ……ムリだ…、サンジ……」
『大丈夫。俺の指だと思ってごらん?俺の指を、今のお前は自由自在に操ることができる』
サンジの…………指………?
『お前、俺の指好きだろ?』
ああ、好きだ。
料理を作りだす指も、俺を優しく撫でる指も、俺の中を動き回る指も……。
『いつもみたいに、ゆっくりと中に入れていく……そう、その調子』
サンジの指が、俺の中を犯していく。
『…半分くらい入れたら、軽く指を曲げてごらん?』
「あっ…!」
『…分かった?』
何か、他の部分より少し硬いものに当たった。その瞬間、びりっと電流が走る。
『それが、お前のイイトコロ』
おそるおそる、もう一度指を曲げてみる。すると、やはりそこに当たると背筋が痺れる。
『さ、それじゃ、ゆっくり動かすよ。一度ぎりぎりまで引き抜いて……入れる』
「あっ!」
『もう一度。同じように、繰り返して……』
「あ…んぁっ……」
言われるがままに動かしていくと、段々と動きが速くなっていく。
徐々に深く、捩じる様に抜き差しを繰り返す。
くちゅくちゅと、淫らな音が室内に響く。
……指1本じゃ、足りない……。
『そろそろ足りなくなってきたでしょ?人差し指も使っていいよ』
本当に俺の心を読んだかのようなタイミングで告げられ、人差し指も一緒に捩じ込む。
電話越しなのに、すべてを暴かれているような感覚に陥る。
サンジの指を思い起こす。
2本一緒に出たり入ったりを繰り返し、時々、中で指を開く。
押し広げられる感じは、サンジに快感として教え込まれていた。
腰を揺らし、右手はぎゅっと携帯を握りしめ、左手はまるで自分の手じゃないように動き回る。
「あっあっあっ……サン…ジぃ…っああ!」
『ゾロ…イイ声。感じる?』
「ふあ……あっ……あっ、イイっ……感じる…っ!」
激しく前立腺を突き上げ、中で掻き回し、指を開き、奥まで届かせようと必死になる。
ぐちゅぐちゅ、くちゅっと、俺のそこから聞こえる音に、さらに煽られ、興奮が高まる。
いつもサンジが触れる場所を求め、探し出し、ひたすらそこを攻め続けた。
「い、や…サンジっ……イっちゃうっっ!……やだ…あっ!」
『いいよ、ゾロ』
「いやっ…だ…っ!」
体は絶頂に向かって追い上げられたが、まだ、イクのはいやだった。
「サンジ……逢いたいっ」
思わず電話越しに叫んだ瞬間だった。
プツンと、通話が切れる。
「あ………」
追い上げられた熱が、一瞬にして温度を下げる。
何を、していたんだ……。
混乱した頭で考えようとした時、がたん、と音がする。
がちゃがちゃと鍵を開ける音がし、扉が開く。
「……っ!」
現れたサンジは息を切らし、顔を上気させ、手に携帯電話を握り締めていた。
「サ…ンジ……?」
何が起こったのかは分からなかったが……目の前に、サンジがいる。
「ゾロ……」
機械を通した音ではなく、直接声が、鼓膜に響く。
「サンジっ……!」
「ただいま。……ごめんね」
ふわりと抱きしめられ、一度下がった熱がまた上昇する。
サンジの匂いが、する……。
「もうすぐ帰れるってのに、待ちきれなくて……つい電話したら、お前の声に情欲しちゃって…」
顔を離し、視線が合う。
「……お前、エロイ」
改めて言われて、今の状況を思い出す。
……そう、サンジに促されるまま、ひとりでヤってたのだ。
指は後ろに突っ込んだまま、シャツとズボンは中途半端に脱いだままだった。
かあぁっと、顔に血が昇る。
思わず抜こうとした指を、サンジが俺の腕を掴むことによって阻止した。
「ゾロ……」
ゆっくりと、サンジが唇を合せてくる。
そのままヤツの舌は、俺のそれを求めて口内を動き回る。
お互いを絡め取る様な荒々しい口付けが終わると、銀糸を引きながらサンジが離れていった。
「サンジ……おかえり」
「うん、ただいま。ごめんね、連絡もできないで……」
「いい。来て、くれたから」
そう言うと、やたら嬉しそうに笑って抱きついてきた。
「ゾロ〜〜〜〜!!」
ぎゅうぎゅうと抱きしめてくれるのはいいが……いい加減、指を抜きたい……。
「なあ………手、離してくんね?」
「あ?」
サンジは顔を上げ、少し体を離す。俺の腕を辿って視線を下げる。
見なくていいから、早く離れろ……。
「やば………」
ぼそっと呟いたかと思うと、情けない顔で俺を見る。
「……お前とさ、電話でヤってたからさ…」
そして、にへらっと笑う。
「俺、準備万端なんだよね」
そう言うと、あっという間に自分の前を寛げ、俺の足に中途半端に引っかかってるズボンと下着を放り出し、俺の腕を掴む。
「あっ……!」
そして、こともあろうか、俺の手を上下に動かし、自慰を強要するような格好で動きを再開させた。
「ああっ、サンジ……やぁっ…!」
「はっ……ゾロ、入れたい…」
しばらく出し入れを繰り返し、おそらくもういいだろうと踏んだのだろう、俺はようやく、指を引き抜くことができた。
それは、安堵感と同時に、物足りなさを感じさせた。
「ゾロ、いくよ」
今まで俺自身の指を飲み込んでいたそこに、サンジはすでに勃ちあがっているそれをあてがった。
今までとは段違いの熱が、俺の中を犯していく。
「…あ……ああ…っ!」
始めはゆっくりと侵入してきたそれは、半分ほど来た所でおもいっきりナカに叩きつけられた。
「はああああああ!!!」
背筋に電流が走る。自分で前立腺に触れたときとは比べ物にならない激しさだった。
サンジはすぐに俺の中で動き始める。
「あっ、はあん!!……ああ……あ…あっ、ふぁ……ひあぁぁ!!」
10日ぶりのそれは、いつも以上に俺を興奮させた。
いきなり入れられても、とにかく…………気持よかった。
「ああっ、サンジっ……サンジ!」
「ゾロ……好きだ、ゾロっ!」
サンジは、俺の中で抜き差しを繰り返しながら、右手を俺自身に添えて来た。
「あっ、だめ、触ったら……っああん!」
放置されていたそれを突然刺激され、あっという間に追い上げられる。
サンジの背に腕をまわし、シャツを掴んで握り締める。足は指先まで力が入り、ただ、サンジにしがみついていた。
絶頂が、すぐそこまで迫っていた。
「ひぁっ……あぁ、サンジ、あっ!……っ、あっあっ、やあ!っあああああああ!!!」
………疲れた。
久しぶりのセックスにしては、激しすぎたようだ。
いや、精神的疲労だろうか、今思い返しても…………恥ずかしすぎる。
今まで、決して自分では触れなかったそこに、ついに侵入してしまったのだ。
……次、またやってしまったらどうしよう。
嫌ではなかったが……アレに興奮してしまった自分を発見してしまい、どうにもばつが悪い。
そしてたぶん、いや絶対、そんな思考がばれれば、サンジはまたさせようとするだろう。
……今度はヤツの目の前で。
………………。
うわあ!何で反応してんだよ、俺!これじゃ俺まで変態じゃないか!!
落ち着け、落ち着け……。
とりあえずは……シャワーだな。
俺の横で、よっぽど疲れていたのだろう、幸せそうに眠ってしまったサンジの髪を梳く。
まったく、てめェだけだぜ?俺をこんなに翻弄させるのはよ。
なんて言いながら、きっと俺の目は、愛おしげにこいつを見ているのだろう。
むにゃむにゃと寝言にならない寝言を言っているサンジを横目に、俺は風呂場へ向かった。
うわ〜エロばっか長っ!結構色々詰め込んだからなぁ、自分的に。
もちろん、もっともっとゾロやサンジにさせたいことはたくさんあります(笑)
テレフォンセックス、萌えます!!