061:しょうしん(傷心)
「さようなら」
「は?」
クソコックの驚いた顔。
「お前とはもう終わりにする」
訝しげな顔。
そうだろうな。何の前触れもなく突然こんなこと言い出したんだから。
「2人で話すのも、これで最後だ」
コックは悲しそうな顔をして、そして、俺の頬に手を当てた。
「お前さぁ……」
こんなことを言い出した俺に、慈しむような声で。
「泣くくらいなら、言うなよ」
泣く?誰が?
言われて、気がついた。
目から水が流れていた。
コックはそれを拭っていた。
そう、これはただの冗談だ。コックを驚かそうと思っただけだ。
本気でそんなこと考えてたわけじゃない。
ちょっと奴のびっくりする顔が見てみたかっただけだ。
けど。
言葉にして、気付いた。
「自分で言って、自分で傷ついてんじゃねェよ」
自分が思っていた以上に、
「心配しなくても、離れて行かねェよ」
俺はコックを…。
「わかったら、もう二度と冗談でもそんなこと言うなよ?」
そう言って抱きしめてくれたコックのからだは、あったかかった。
「悪ィ……」
そしてそっと、コイツの背中に腕をまわした。
ゾロもちゃんとサンジくんが好き。
普段はそれに気付かないだけなんです。