076:幸福



窓全開、カーテン全開、暖かい日差しが当たるそこで、緑頭が気持ちよさそうに眠っている。

俺はと言えば、そんな寝ぐされマリモの隣で大人しく本を読んでいた。

こいつの部屋は、マリモ頭に合わせて緑で統一してある。俺がそうしたのだ。

カーテン、布団、座布団、キッチンマットにトイレマット、風呂セット一式に至るまで、俺のチョイスだ。

大学生になりひとり暮らしを始めるというので、1Kの部屋を借りたまではいいが、とにかく面倒くさがるヤツだ。

家具や雑貨はテキトーでいいと抜かした奴に対し、それなら俺に選ばせろよと迫った。

おかげで、統一感ある、緑の癒し空間が出来上がった。

口では文句を言いつつも、俺がしょっちゅう部屋に上がり込むと、そこにいることを許してくれる。

俺は、こいつのために料理を作り、晩飯を一緒に食う生活も当たり前になってきた。

…そうだ、そろそろメシの支度しようかな。

読んでいた所に栞を挟み、よっこいしょと立ちあがる。

ふと顔を上げると、棚の上にサボテンが見えた。

思わず笑みが零れる。

こいつのセリフを思い出す。

小さな小さなサボテン。

手のひらサイズのそれは、黄色い鉢からちょこんと顔をのぞかせていた。



なあ、めずらしいな、お前がサボテンなんて買ってくるなんて。同類を愛でるのか?

……いいだろ、別に。お前がサボテンとかマリモとかいうから、思わず目に付いたんだよ。



だってさ。



何で黄色い鉢植えなわけ?お前にしては派手なの買ったじゃん。

……お前の、色だろ?



なーんて、すんげぇ可愛い発言してくれちゃったのよ?

そりゃあその日の夜は、がんばって励んじゃったよ。

起こさないようにそっとゾロに近付き、屈みこんで髪を撫でる。

意外とふわふわとした髪は、風に揺られてまるで芝生のようだ。

うん、気持ちいいな、この感触。

こいつの愛しいおでこにキスをひとつ送り、小さなキッチンへと足を向ける。

うん、なんだか、ほのぼのとした気分。

幸せって、こんなかんじだよな。

やっぱ俺、この空間、好きだな。










こんなのんびりとした空間で感じる幸せって、ありますよね。
緑で統一、これ実話。カーテンと布団と座布団と絨毯、緑が基調。これ、うちの部屋(笑)
ゾロの部屋は畳かな〜と思い、絨毯だけ省いてみた。畳も緑だし(笑)