ヒメハジメ



「あと5分だってよ」
「お、マジで!」
キッチンで明日の準備をしていたサンジに、コタツに足を突っ込んで毛布にくるまっているゾロが声をかける。
片手にみかん、片手にTVのリモコンを持って、チャンネルを変えていた。
「どの番組がいい?」
「ん〜別に何でもいいや。こだわりなんてねぇし」
「ふ〜ん………じゃ、コレ」
洗い物をしていたサンジは手を拭きながらゾロの隣に座り、ゾロはバラエティ番組らしきものにチャンネルを合わせた。
好きな有名人がいたから、ではなく、番組の可愛らしいマスコットキャラの着ぐるみがいたから、である。
「兄貴ってさ、このキャラクター好きだよね〜」
「そうか?そんなことないぞ」
「うわ、無意識なんだ」
「……何だよその哀れむような目は」
「自分の弛んだ顔を鏡で見てみなって」
「………3分前」
「あ、誤魔化した」
ぽいっと口にみかんを入れるゾロを見て、サンジもコタツに置いてあるみかんに手を伸ばす。
ゾロはすでに5つ目を食べ始めていた。
「…食べすぎじゃない?」
「問題ねェ。山のようにナミからもらった」
「まぁ……確かにひと箱もあるけど……手が黄色くなりそう。兄貴って、みかん好きだよね〜」
「冬はコタツでみかんに限る」
丁寧にスジを剥きながら、一粒ずつ口に入れる。
この義理の兄弟は普段はまるで似ていないのだが、「みかんの食べ方」なんていう些細な所に共通点があったりする。
「………カウントダウンってどれくらい前から始まるんだ?」
「さぁ……1分くらい前かなぁ?」
「ふぅん」
「そういえばさ、よく言うよな。俺は年が変わる瞬間地上にいなかったんだぜ〜とか言ってジャンプするヤツがいるとかいないとか」
「くだらねぇ」
「でもさ、実際は年越しの瞬間ってそんなこと忘れてるよな」
「まぁな」
「………な、飛んでみようか」
「はあ!?」
「せっかく思い出したんだし!」

『さぁ、カウントダウンの開始です!60!59!58!……』

「ほらほら、立てって!」
「あぁ!?何で俺まで!」
「いいじゃんいいじゃん!年に一度しかない瞬間だぜ!」
無理やりゾロの腕を引き、コタツから引きずり出す。
無意識に手をつなぎながら、画面を凝視し、タイミングを計る。

『10!9!8!…』

「よし、準備いいか?」
「お、おう…」
サンジのあまりの気迫に、ゾロも手に力が入る。
釣られてTVに釘付けになった。

『5!4!』

ギュッと握り締める。

『3!』

ギュッと握り返す。

『2!』

上体を少し沈める。

『1!』

「よし、今だっ!」



『A HAPPY NEW YEAR〜〜〜〜〜!!!』



「っしゃ〜〜〜!!!」
地面に足がつくと同時に雄叫びを上げるサンジに、ゾロも思わず笑みを浮かべる。
「明けましておめでとう!ゾロ!」
「おう、おめでとう」
「今年もよろしくな!」
「ああ、よろしく」
繋いだ手をそのままに、サンジはもう片方の手も取り、触れるだけのキスをゾロに送る。
ただ相手のぬくもりを感じるためにじっと動かず、ゾロもサンジの好きなようにさせていた。
ようやく唇を離すと、そこには弟としてのサンジではなく、恋人としての顔があった。
「今年も、ずっと一緒にいるからな」
「……あぁ」
「ずっと好きだからな。ゾロ」
「あぁ。……俺もだよ」
サンジは嬉しそうに笑うと、今度は腕をゾロの首にまわし、先程とは違い深く口付けた。
何度も角度を変え、舌を追いかけ、甘い唇を味わう。
ゾロも手をサンジの背にまわし、それに答えた。



「あっ……冷たっ…!」
「大丈夫、すぐに熱くなるよ」
大きなバスタオルを丸めて腰の下に差し入れられ、足を抱え上げられる。
ローションを既に勃ち上がったモノに垂らされ、そのまま下へと流れ落ちていく。
明るい部屋に照らし出されたゾロの秘部は期待に震え、サンジの指を今か今かと待ち構えていた。
液体を塗りこめるように中指が進入していく。
はじめは冷たかったそれは、徐々に体温と同化していった。
「はぁ……ふぅ…ん……」
ゆっくりとした動きが心地よく、鼻から抜けるような甘い声で喘ぐ。
「ゾロ、ねぇ、気持ちいい?」
「ん……ぁ……」
「腰揺らしちゃって。もうちょっとしたら、俺のをあげるからね」
「ふぁ……ぁ…」
指を2本にし、3本にし、じっくりと解すサンジの指に、ゾロは次第に物足りなさを感じるようになった。
「サンジ……サンジっ………はや、く……」
「ん?」
「おまえの、が……ぁあ……」
「欲しい?」
コクコクと首を縦に振る。足を大きく開き、自分の手で膝を支えてサンジを迎え入れようとする。
「ねぇ兄貴、俺のがいいんでしょ。いいよ、じっくり味わいな。いくらでもあげるよ。兄貴の望むままにね」
態と、甘えるような声で「兄貴」と呼び、ゾロの被虐心を煽る。
濡れてひくつくそこにサンジは己のものをあてがい、上から突き入れた。
「あああっ!!!」
指とは比べ物にならない圧迫感を受け、ゾロは衝撃に身体を震わせる。
ぎゅうっと締め付けられるが、サンジはなんとか快感をやり過ごした。
「ゾロ……すげぇ、締め付け……。ちょっと、力抜ける?」
「う……ん………」
ふぅーと長い息を吐きながら、徐々に力を抜いていく。
落ち着いていくと、体内に直接、お互いの鼓動が響いていた。
サンジは身体を倒し、ゾロの胸に頬をつける。
「あ〜〜〜………やべぇ、気持ちいい……」
「んあっ……急に、動くな……」
「はぁ〜〜〜ずっとこうしてたいな〜〜〜な?ゾロ」
「ばか。このままじゃ生殺しだろう」
「でもさ〜、なんかいいじゃん、こういうまったりしたかんじ」
「人に突っ込んでおいて何を言うか」
「え〜突っ込まれるの好きなくせに〜」
「っ、誰のせいだ誰のっ!」
「へへへ〜俺のせい」
「にやにやしてんじゃ……!ふぁっ」
「んも〜やらしい声」
「ばっ、やぁっ、そこっ……待っ…!」
「早くって言ったり待ってって言ったり。わがままだな〜兄貴は」
言いながらサンジは少し身体を起こし、小刻みに腰を動かし始める。
ゾロのイイトコロを狙い、敏感なトコロに焦点を定める。
「あっあっあっ、ダメ、やだっ、サンジっ…!」
「何で?ココ、好きでしょ?新年なんだし、いっぱい気持ちいいコトしようよ」
「んんっ!やぁ…っ、もっと……もっと……っ!」
「このまんま、初日の出見ようぜ。また1年、繋がっていられるようにさ」
「あっ、ああっ!サンジ……っ、サンジぃ……っ!やああああああっっ!!!」
「ゾロ!ゾロ!ゾロっ!!」
次第に激しくお互いを求め合い、光が窓から差し込むまで、2人は何度も何度も重なり合った。



共にいることを、誓い合うように。






















全然エロくない気がする姫はじめ。
みかんも年越しジャンプも、伏線ではなく単なる2人の日常だったり。
今年も1年、ラブラブしておくれ!