毛布の上に、優しく体を横たわらせる。
深く深く口づけながら、サンジの手はゾロの衣服を取り除き始めた。
胸に触れると、ゾロの眉間に皺が寄る。嫌がるように首を振って唇を離した。
「そこはっ……さわるなっ」
「ん…?」
ゾロの腕には鳥肌が立っていた。男達から受けた愛撫を思い出したのだ。
「大丈夫。ちゃんと、俺を見てて。今ここにいるのは俺だ」
そう言うと、サンジは胸に唇を寄せた。吸いつくように何度もキスをする。
キスをしながら、己のもゾロのも、器用にすべての衣服を剥ぎ取る。
今度は指が全身を愛撫しはじめた。徐々に下へと下りていき、中心に辿り着いた。
「……すげぇ、濡れてる……」
「ばかっ、言うなっ」
中に入り込むことをせずにその付近を指の腹で撫でるサンジに、ゾロは真っ赤になって抗議する。
「さっさと入れろよっ」
「……わがままなお姫様だ」
つぷ……と、サンジの指が一本、ゾロの中に侵入した。
「うあっ…!」
熱く濡れそぼったそこは、サンジの指をいやらしく包み込む。
ゆっくりと出し入れするたびに水音が響き、ゾロは体を震わせた。



サンジは、あまりに新鮮な行為に興奮を隠せなかった。
女の体を抱いたことはある。気持ちいいものだし好きだった。
ゾロと出会ってからはゾロ以外と肌を重ねることをしようとは思わなかった。
男の体であっても、ゾロは特別だし、気持ちよかった。
女のゾロの体を抱ける日が来るなんて、思ってもみなかった。
きっと楽しいんだろうなぁと妄想はしても、現実に起こり得ないことだとわかっていた。
しかし今は、これが現実である。
恐らく二度とない。ゾロ自身が望んでいるなら、思う存分味わおうと思った。

ゾロはすでに、わけがわからなくなりはじめていた。
女の体の性感帯なんて知らない。相手はサンジなのに、受ける感覚がいつもと大幅に違う気がする。
疼く場所が違う。入れられている場所が違う。
いつもは女のように喘ぐ自分。
今まさに女となって喘ぐ自分。
はじめはサンジとさえ怖いと感じていたこの行為だが、今はサンジならば……と思えるようになった。



「あっ…ああっ……!」
いつの間にか3本に増えた指が、激しくゾロの中を出入りする。
ぐちゅぐちゅと音を響かせながら、サンジはスピードを速めていった。
「サンジっ、ヘンだ……何か、ヘンっ……!」
「大丈夫、そのまま身を任せて……」
「いや、だっ……抜いて、くれぇ……っ」
快感とは違う戸惑った表情を見せたため、サンジは一度指を引き抜く。
「はぁ……はぁ……」
「ゾロ……平気か?」
「なんか……いつもと、違う……」
「そりゃあそうだ。体のつくりが違うんだ」
「おかしく、なりそうだ……」
「おかしくなっちまえよ。最高に気持ちよくしてやるから。大丈夫だ」
「……本当か?」
「ああ」
頷くと、今度は一本だけ指を入れる。そして少し探ると、ある一点目掛けて突いた。
「ひぁっ!」
「……ビンゴ」
そのままサンジは同じ場所をひたすら狙い続ける。
「やっ……なに…っ!?」
「ココが、今のお前の気持ちいいトコロ。我慢せずに体を解放するんだ」
「あっ!ああっ!ソコ、やだあ!」
「ゾロ、ゾロ……」
「あ、ぅあ!サンジっ…ソコ、だめっ…!!」
「イけ、ゾロ!」
「あ、あ、あ、あ、ああっ……!……っあああああっっ!!」
びくんと大きく体を震わせる。全身が突っ張り、体が痙攣する。
男の体で絶頂を迎えた時と、また違った快感が全身を走り抜けた。

「はぁ、はぁ、はぁ……」
「悪ぃ、ちっと無茶しちまったか…?」
だらりと力の抜け切ったゾロの体をサンジは優しく撫でる。
「……いい。ヘンだったけど……最後は、気持ちよかった」
「………そうか、よかった」
サンジはほっと胸を撫でおろした。
「それより、さっさと続きするぞ」
「え、お前大丈夫か?」
「お前のソレの方が、大丈夫じゃねぇだろ?」
笑ってソレ、と指された先に、膨張しきったサンジのモノがあった。
「う……だってお前、そんなエロいお前見せられちゃ……」
顔を赤くするサンジにゾロはクスクスと笑う。
そして脱ぎ散らかしてある服を手繰り寄せ、錠剤を、取り出した。
一気にサンジの顔が引き締まる。
「……お前が、飲ませてくれよ」
そう言ってサンジに手渡す。
「俺が、わけわかんなくなった隙にさ」
「……わかった」

「いくぞ」
「……っあ!」
サンジはゆっくりと体を進めた。少しずつ、ゾロの中に埋め込んでいく。
最奥までたどり着くと一度大きく息をついた。
「はぁ……。…ゾロ、動くぞ」
「ああ…」
ぐっとゾロの細い腰を持ち、動き始める。
はじめは徐々に、そして次第に大きな動きに変化していく。
「う、あ!……っ、おお、きい……っ!」
「くぅっ、ゾロ、すげぇ熱い……!」
初めて感じたゾロの内部は、おそろしく熱く絡みついてくるようだった。
男同士で交わっている時のきつく締めつける感じではなく、包み込まれているような感覚だ。
サンジは夢中で腰を振った。
「あっ、やぁ……、また、イく……!」
「あ……俺、もっ……!」
サンジは叩きつけるように捻じ込み、その熱をゾロの中に思う存分吐き出した。
が。
「あっ…」
「あっ…」
出した直後、一瞬にしてふたりは冷静さを取り戻した。
「ゴメン……中に、出しちゃった……」
ふたつの意味で、サンジは謝った。
ひとつは、仮にも女性相手に何も言わず中に出してしまったこと。
そしてもうひとつは。
「……飲まなきゃいけなかったのに」
「ゴメン!」
あまりに気持ちよくて、ついいつものように射精してしまった。
「あ、あの……もう一回、する?」
と、間の抜けた顔で質問をしてしまうほど、サンジは慌てふためいていた。
ゾロは困ったように笑い、体を起こす。
「……しょうがねぇな」
そして、一度出してしぼんでしまったサンジのそれに指を這わした。
「っ、おい!」
「動くな」
体を屈め、ゾロは今度は舌を這わせた。
「やめろって、気持ち悪くなったらどうすんだ!」
「そしたらすぐにやめる。心配すんな」
小さかったそれは、ゾロの愛撫を受けて再び大きさを取り戻していった。

不思議と、気持ち悪いとは思わなくなっていた。
元々、今までに何度かしてやったことはあったのだ。二度の解放を迎えて、感覚が鈍っているのかもしれない。
根元に手を添えながら、口に含んで上下に動かした。
「ん……」
「っ、ゾロ……すげ、イイっ…」
サンジはゾロの頭に手を添える。しかし、無理矢理動かそうとはせずにゾロに身を任せていた。
絶頂が見え始めた時、サンジは一度ゾロに行為を中断させた。
「ゾロ、顔、上げろ」
素直にゾロが顔を上げる。しかし今度は手を動かし、サンジに快感を与え続けた。
サンジは薬を取り出し、ゾロの口に入れた。そして唾液を使って飲み込ませようと口づけた。
多少飲み込むのに手間取ったようだが、大きく喉が動いたのを確認して唇を離す。
ゾロは再びサンジのものを口にし、今まで以上に激しく動かした。
「うっ……ゾロ、イくっ…!」
「ん、んんっ…!」
サンジの体が跳ねる。体中の熱が液体となって、ゾロの口の中に注がれた。
それをゾロは必死に飲み下す。一滴も逃すまいと全てを受け止めた。

最後まで飲みきり、先端を吸い込むようにしてからようやくゾロは顔を上げた。
にっこりと笑い、
「ごちそうさまでした」
と丁寧に挨拶をする。その顔に、またサンジは顔を赤く染めた。

変化はすぐに訪れた。
ゾロの顔が強張ったと思った瞬間、自分の体を抱きしめて蹲る。
「ゾロ!」
サンジは力いっぱいゾロを抱きしめた。意味がないことはわかっている。しかし何もせず見ているだけなんて出来なかった。
「う、ああ、あああああ……!!」
最初に変化したときと同様に、激しい痛みに体を引き攣らせている。
ゾロの手を握り締める。骨が折れるのではないかと思うほどの力で握り返される。
悲鳴が止むまで、ずっと抱きしめ続けた。



ふっと、ゾロの体から力が抜ける。サンジの手を放し、意識を失った。
慌てて抱きしめなおしたサンジはゾロを見て、目尻に涙を浮かべた。

そこには懐かしい、愛してやまない剣士ゾロの姿が戻ってきていた。



朝からクルーは大喜びだった。
元の姿に戻ったゾロが朝食の席に現れたからだ。
ゾロの悲鳴は、船中に響いていた。誰もがそれを知っていた。
しかしサンジに任せろと釘をさされていたため、誰も手を出さなかった。
待つだけなのは辛い。特に行動力のあるこの一味にとってはそうだった。
ゾロは、元気な姿で戻ってきた。それを皆心から喜んだ。
まだ痣は残っていたが、男のゾロにとっては屁でもないものだ。きっとすぐに治るだろう。
朝食を取ったらすぐに出航だと、船長は意気揚々と腕を掲げた。



「よし、やっぱコレだな」
ゾロは久しぶりに、満足気に笑った。
その手は、一体何トンあるんだという錘を軽々と持ち上げていた。
考えようによっては女の体も悪くなかったと、今のゾロには思えた。色々気持ち良かったし。
だがやはり、慣れ親しんだこの体が一番落ち着くと、思う存分鍛錬に励んだ。
「おう、やってるな、筋肉マリモ」
「おう、やってるぞ、エロマユゲ」
随分と機嫌のいいゾロに、サンジは笑って手に持っているグラスを差し出した。
「水分、ちゃんと取れよ」
「お、さんきゅ」
タオルで汗を拭きながらグラスを受け取り、口に運ぶ。
「今夜、格納庫な」
と、なんとゾロからお誘いの言葉が上がった。
「お前、いいのかよ……昨日の今日だぞ?」
「ああ。早く男の体で、お前を感じたいんだ」
わざと挑発するようにサンジの耳元で囁き、答えを聞く前にグラスを置いてさっさと鍛錬に戻ってしまう。
耳まで真っ赤にしたサンジは、それが冗談なのか本気なのかはかりかねた。
わなわなと拳を震わせ、空に向かって叫んだ。

「くっそぉ〜、覚悟してろよぉぉぉおお!!!」

怒声と笑い声が絶えない日常に、ゾロはもう一度、心から笑った。
三本の刀を腰に差す。
愛おしげに柄を撫でる。
すらりと抜きさり、三つの白刃が太陽の光を受けて煌めいた。




















初の長編です。
なんか普通と違う女ゾロ話を書いてみたかったのですが、何が普通で何が普通じゃないかなんてわかりませんね。
結局はいつものサンゾロと変わらないような気もしますし…。
ゾロの、女とかくいなとかに対する想いや悩みを書いてみたかったのでした。
長編と言う程の長さではないかもしれませんが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。