1.「それ以上煽るな」



ゾロがめずらしくもぶっ倒れたが、それは仕方ないことだった。

元々雨の日は、胸の大傷が疼くらしい。
今日も朝から雨だったから、体調は良くなかったんだろう。もしかしたら、傷が熱を持ってたのかもしれない。
さすがに傷が開くってことはもうないみたいだが、何せ全治2年だ。
いくら体力バカのあいつでも、そう簡単に治っちゃ人間と認めねぇぞ、俺は。
どうやらちゃんと人間だったようで、朝飯には起きてこれなかったみてぇだ。
様子を見に行った時は「問題ねェ」と追い返されたが、昼飯にも来なきゃ何か胃に優しいもんでも持って行こうと思ってた。

今日はちょいとばかし運が悪かったみてぇだ。
そろそろ昼飯も終わるという頃に、嵐と、敵船とを、同時に相手にしなきゃならなくなった。
それまでずっと男部屋に籠っていたゾロも飛び起き、あっという間に大雨の中の大乱闘となった。
ルフィは敵船に乗り移り喜々として拳を振るっていた。
ゾロと俺はメリーに乗り移ってきた野郎どもを蹴散らす。
ウソップ、ナミさん、ビビちゃんの3人に、船のことは任せていた。
メリー号に比べりゃ随分とでかい船だし、人数も多いみたいだが、実力としては大したことなかった。
かすり傷ひとつ負うことなく敵を片付け、今度は一丸となって嵐に立ち向かった。

嵐も無事に切り抜け、お茶でも用意して一息つこうとした時だった。
俺の隣でどさっという音が聞こえた。
クソ剣士が倒れたのだ。
慌てて起こそうとして触れた体は、異常に熱かった。
「……っ、おいっ!どうした!」
揺さぶってみるものの反応はない。ひどく苦しそうな息遣いだった。
俺はパニックになり、ナミさんの名前を連呼しながら走りだした。

「ただの風邪だとは思うけど……傷が熱を持ってるし、無理が祟ったんじゃないかしら」
格納庫に毛布を持ち込み、そこに寝かしつけられたゾロは、やはりひどい熱だった。
ナミさんが言うには、まだ完全に治りきってない傷を持ってる上に敵船と戦う破目になり、更に長時間雨に打たれたせいだという。
ぶっ倒れるまではそんな素振りを全く見せなかったくせに、意地っ張りな奴だ。
あとは俺が看るよと言って、ナミさんをラウンジに促した。すでにお茶はスタンバイ済みだ。
額のタオルは、あっという間に熱で冷たさを失う。
俺は何度も何度も、氷水に浸してはゾロの額にタオルを乗せるという行為を繰り返した。

ゾロが目を覚ましたのは、みんなの晩飯も終わった後だった。

俺は後片付けを終えると、晩飯の支度中と晩飯中に看病をしていたウソップと交代した。
「ウソップ、ラウンジにお前のメシあるから、食ってこい」
「お、サンキュ!腹減ったんだ〜」
「こいつ、目ぇ覚ましたか?」
「いんや、まだ。熱も引かねぇし…」
「そうか。ま、あとやっとくから、メシ食って休んでこい」
「おう、頼むな」
ひらひらと手を振ってウソップが出ていくと、俺は改めてゾロを見る。
確かに、良くなった気配はない。
だがしかし…………。
辛そうな顔と上気した頬、荒い息遣いが、どうにもヤってる時を彷彿させて…………。
俺はついゾロの顔に手を伸ばし…………。
イヤイヤイヤイヤ!ダメだ俺!相手は病人なんだ!いくらゾロが可愛いからって………。
いやしかし、これは据え膳とか言うやつでは…………違う!ゾロは今苦しんでるんだ!
なんてひとりで葛藤してると、ゾロがうっすらと目を開けた。
「ゾロ…!」
邪なことを考えていたせいか、少し焦った。
ゾロの目はまだ焦点が合っていないようで、ぼんやりとした表情だ。
ぼーっとした顔も可愛いが、とにかく目を覚ましたことに安心する。
「あ……サンジ?」
熱のせいか、潤んだ瞳をこちらに向ける。
こいつは病人こいつは病人と唱えながら、額のタオルを取り、直接手で熱を測る。
「ああ。おはよ。んー……まだ熱いな。胸の傷はどうだ。痛いか?」
痛いだなんて言うわけないよな、とは思いながらも尋ねる。
「痛くは……ない。なんか、熱いけど……」
お?意外と素直な口調。寝起きだからか熱のせいか。
「そうか。他はどうだ?頭痛いとかだるいとか」
「………よくわかんね」
「そっか」
なんか子供みてぇだ。
とりあえず用意してきた蒸しタオルで体を拭いてやろうと、ゾロの体を起こす。
「辛くなったら言えよ」
そう言って、邪な気持ちと葛藤しつつ、ゾロの体を拭いていく。
葛藤はあったが、間違っても襲っちまおうという気持ちがあったわけじゃないぜ?
「あ……?俺………」
「ん?」
「何で、寝てたんだ……?」
そうか、突然倒れたから分かってねぇんだ。
「お前、嵐が去った瞬間にぶっ倒れたんだよ。風邪と、傷のせいでな」
「…………………わりィ」
「気にすんな。さっさと治せばいいんだからよ」
よっぽど体がだるいのか、身動きすることなく俺に体を預けている。
蒸しタオルが心地いいのか、ほぅっと息をついている。
…………耐えろ、俺。
きれいさっぱり拭き終り、そういえばこいつは、朝から何も食ってなかったことを思い出した。
「腹、減ってねぇか?なんか食いやすそうなもん作ってきてやるよ」
もっと早くに気付けばよかった。そうすりゃウソップに看てもらってる間に作れたのに。
今さら言っても仕方ないので、できるだけ短時間でできるものにしようと考える。
キッチンへ行こうと立ち上がると、くいっと袖が引かれた。
顔を向けると、ゾロがスーツの袖を摘まんでいる。
………おいおいおい、そんな可愛い仕草するんじゃねぇよ。
「ん?何?何かリクエスト?」
「…………行くなよ」
……………………は?
聞き間違いじゃなければ、こいつ今すごいこと言わなかったか?
目を丸くしている俺に、ゾロはさらに追い討ちをかけた。
「…………ここに、いろよ」
俺の頭にファンファーレが響く。
そりゃあお前、俺がいなきゃ寂しいってことかよ!
更に驚いたことに、ゾロは俺の首に腕を回し、ぎゅっと抱きついてきた。
誘ってんのかよそりゃ!と思わず叫びたくなった。
さっきまで妄想を繰り広げていたくせに、いざとなったら病人相手にたじたじになっていた。
「あのー、ゾロ君?」
「ん………?」
「この状態、俺ツライんだけど」
「………………」
「それ以上、煽るなよ。襲いかかっても知らねぇぞ?」
「………………うるせぇ、煽ってんだよ」
「!!!??」
あまりのことに固まった。だってだってだって!
ゾロからのお誘いだぜ!!?
「……しんどいんだろ?」
「関係ねェ……」
「ホントに、知らないぞ?」
「しつけぇ」
「…………ゾロ………」
病人だとか、体のこととか、悪ぃけど吹っ飛んだ。
俺は思いっきり、ゾロの唇にかぶりついた。

「ん……ふっ」
熱を持った胸の傷に舌を這わせながら、指でゾロの後ろを解し始める。
ゾロの中は、すんげぇ熱かった。
「なぁ、ゾロ……ここ、すげぇ熱いよ」
「あ……っ、はぁん……」
今日のゾロは積極的だ。俺の指を締め付け、腰を揺らし、甘い吐息を洩らす。
しこりを見つけ刺激すると、気持ちよさそうな声を素直に上げる。
「ああん!あ、はっ、ああぁ………」
何度もそこに触れながら、俺の舌はぷっくりとした胸の飾りを含み、今度はもう片方の手が傷を辿る。
次第に指を2本、3本と増やし、時にやさしく、時に激しくゾロの中を動き回る。
解れる頃には、ぐちゃぐちゃのトロトロだ。
指よりも更に大きなものを求めて、そこはひくひくと動いている。
その様子があまりに卑猥で、見ててすげぇ楽しかった。
「ゾロ……挿れるぞ……」
「あっ、はやく………欲しいっ!」
そこまで言われれば、男冥利に尽きるってもんだ。期待は裏切れねぇよな。
俺のものがずぶずぶと入っていくと、ゾロの体が歓喜に震える。
ぐいっと最後まで押し込むと、また気持ちよさそうな声を上げた。
「はぁ……サン、ジ………動いて……」
「仰せのままに」
ゾロの言葉に、俺は動きを開始する。始めはゆっくり、徐々にスピードを上げていく。
イイトコロを突き上げると喜び、ぎりぎりまで引き抜いて奥まで差し込むと体を震わせる。
こいつは、出入り口付近を浅く抜き差しされるのも好きだ。
カリが肉を広げる感じとか、出入りするもどかしい感じが好きらしい。
物好きな奴だ。
そんな奴に喜んで付き合ってる俺も、大概物好きなんだろう。
ゾロはさっきから喘ぎっぱなしだ。体調はいいのかいと思うほど乱れている。
仕上げとばかりに、俺は前立腺目掛けて腰を振る。
激しい動きに、ゾロの体は追い上げられていった。
「ああっ、ああっ、んん、あ、やぁ、イクぅっ………っ、はあああああああん!!」
ゾロが白濁を撒き散らしたと同時に、俺はゾロの中で果て、すべてを注ぎ込んだ。



「あーーーー………………頭いてェ……」
「当たり前だろ。ったく、無茶しやがって」
翌朝、毛布にくるまって撃沈する男がひとり。
誰がって?
もちろん、ゾロが。
風邪っぴきの上、傷からくる発熱でぶっ倒れた男が、メシも食わず、挙句俺を誘惑してセックスまでやったんだ。
悪化して当然だ。
俺はちゃんと我慢してたぞ。煽ったお前が悪い。
そういや、やけに昨日は積極的で素直だった。何だったんだ、ありゃ?
「お前、何で昨日あんなに乗り気だったワケ?」
「………………」
聞いてみるが、答えない。隠れているつもりか、毛布で半分顔を隠している。
顔も耳も赤い。これは熱のせいだけじゃないよな?
「なぁ」
「…………だって、お前、優しかったから……」
「………は?」
「……人肌恋しい時だって、あるだろ?」
顔を真っ赤にして、消え入りそうな声で呟くそれは、ゾロの素直な甘える言葉。
あぁ、熱に感謝だ。俺はすんげぇ幸せもんだ。
あまりの嬉しさに、俺はゾロに飛びつき、熱い熱いキスを贈った。
















素直なゾロが好きです。
素直じゃないゾロもいいですが、やっぱりサンジくんとラブラブなゾロが好きかな?
エロシリーズ、スタートです♪