5.「俺の前でだけ乱れろ」
「ルフィ……やめろって」
「ん?いいじゃねぇか、別に」
「でも、コックが……」
「ゾロが黙ってりゃわかんねぇよ」
「………バレたら殺されるぞ?」
「そん時ぁゾロも一緒だな」
「あっ……こらっ……!」
「シッ、でけぇ声出すなよ。こんなトコ見られたら終わりだぞ」
「…………っ!」
倉庫から漏れ聞こえてきた声に、サンジは思わず足を止め、気配を消す。
(何、やってんだ……?)
中から聞こえるのはルフィとゾロの声。
こそこそと何やってんだ!と怒鳴りこむことを躊躇うような雰囲気が漂っている、気がした。
「ルフィ……やっぱり……むぐっ!」
「ゾロ、うるさい。これでも咥えてろ」
「んんっ……」
「これで共犯な。サンジに言えないだろ?」
(何、を……?)
知らずに体に力が入る。さあっと血の気が引いていく。
これは、まさか………。
「うまいだろ?」
「ん、んんっ……!」
ルフィとゾロは…………。
サンジはそこまで考え、逃げるように倉庫の前から去った。
眠れない夜を過ごし、次の日サンジは、いつも以上にゾロを意識していた。
あれは何だったのか、問いただしたいと思う反面、聞くのが怖かった。
まさか自分の前で乱れるあの様を、ルフィにも……。
考えるだけで怒りと嫉妬が沸き起こる。苛々がおさまらない。
ぎりっと煙草を噛み潰しては苦い思いを繰り返した。
元々仲間になった時から、2人の阿吽の呼吸には舌を巻いていた。
それほどに言葉なくして通じ合えるものなのかと羨ましく感じていた。
ルフィには敵わないのかと思っていた矢先のゾロからの告白は、サンジにどれほどのものをもたらしただろうか。
それが、実はルフィと繋がっていたのかと考えるだけで……。
サンジは腹の中に、どす黒いものが渦巻いていることを自覚した。
許せない、と、その怒りと嫉妬はゾロに向けられた。裏切られたと思った。
許さない。
決して、許さない。
「っ、何すんだクソコック!」
夜の鍛練も終わり、シャワーを浴びて見張りにつこうと考えていたゾロは、突然キッチンから出てきたサンジに腕を取られた。
そのまま無言で格納庫まで連れてこられ、勢いよく床に放り出される。
思わずふらついたゾロは、サンジに押し倒され、あっという間にネクタイで両腕をひとまとめに縛られた。
「何考えてんだ!離せっ!」
今日一日、不穏な空気を撒き散らしていたサンジだったが、こんな理不尽な扱いを受ける覚えがないゾロは、必死になって抵抗する。
「黙ってろよ」
耳元で低音が鳴り、ゾロはびくんと体を震わせる。
動きが鈍ったのをいいことに、サンジは縛り上げた腕をゾロの頭上へ持って行き、体に舌を這わせ始めた。
すぐにシャワーを浴びるつもりだったゾロは、上半身は何も身につけておらず、汗もまだ引いていない状態だった。
サンジの左手は、抵抗させまいとゾロの腕を捉え、体に乗り上げることによって足の動きを封じた。
右手はゾロの左乳首を愛撫し、舌は首筋から胸、傷跡と辿って下へと移動していく。
「おいサンジ、よせって……」
突然サンジに襲われることは今までにもあったので、初めは今回もそれかと思った。
しかし、汗を流していない今の状態に抵抗を感じるのと、サンジの様子がいつもと違ったため、なんとか止めさせようとした。
何も言わずに事を進めるサンジはおかしい。いつもはうるさいくらいにゾロを言葉で煽ってくるからだ。
「っ、サンジっ……!」
舌使いと指使いに翻弄されていくが、このまま流されまいと身を捩る。
「やめろって……なぁ、聞けよっ」
「うるせぇ」
「あぁっ」
きゅっと強めに乳首を責められる。サンジに開発されたそこは、多少の痛みは快感として感じるようにさせられていた。
「………ルフィには許すくせに、俺には抵抗すんのかよ」
ぼそっと呟かれた言葉が理解できず、ゾロはサンジの顔を見る。
睨みつけるブルーの目は、嫉妬でぎらぎらと輝いていた。
「あ………?」
何を言っているのかという目でゾロはサンジを見るが、今度はサンジの手が、ゾロのボトムに伸びてきた。
途中まで脱がしただけで、サンジは直接ゾロのモノに触れてきた。
上半身への愛撫で緩く勃ち上がっていたそれを握りこみ、性急に上下に動かし始める。
「あっ、や……ヤメロっ……!」
いきなりの直接的な刺激にゾロは悲鳴をあげ、ぎゅっと目を閉じ体を強張らせた。
サンジの手が、ゾロから溢れてきたもので汚されていく。それをも擦りつけるように動かすと、くちゅくちゅと音がした。
耳からも犯されるような感覚にゾロは顔を赤くし、目を開けられないでいた。
目を閉じることによって一層聴覚が敏感になることにも気付かず、サンジによって施される快楽に意識を奪われる。
止めさせようと思ってはいるが、体はどんどんと快楽に流されていった。
あと少しで絶頂という時にふっと行為を中断される。
目を開けると同時に体を抱えられ、四つん這いの格好にさせられた。
ぐいっと髪を掴まれると、前だけを寛げ、すでに勃起しているサンジの前に引っ張られる。
「咥えろ」
命令口調で言われ、無理やり口の中にそれを押し込まれた。
圧迫感と雄のにおいに、目尻に涙が浮かぶ。
「歯、立てるな。舌も使え」
やはりいつもと違う、怒っているのだろうか……でも何故?
そんなことを思いながらも、更に大きくなっていくサンジのモノを必死で咥え続けた。
サンジは、がつがつと腰を動かし、ゾロの口に己のものを押し付ける。
縛られ、獣の格好をさせられてもゾロは喜ぶ。仕込んだのは自分だ。
しかし、そんな姿をルフィの前でも見せているのかと思うと、はらわたが煮えくりかえる思いだった。
優しくなんてできるわけがなかった。このままでは手酷く犯してしまう。傷つけるかもしれない。
それがわかっていても、行為を止めることができなかった。
ゾロの体は、すでに熱い。当然だ、今まで汗を流して鍛練していたのだ。
その汗が流れている背中をつっと撫でる。途端にゾロの背がびくんと跳ねる。
指はそのまま下へと移動し、双丘の中に隠されている秘部にそっと触れる。
緩やかに付近を揉み解していると、そのたびにゾロの腰が揺れる。
「淫乱」
冷たい声でゾロをなじる。その声にも、ゾロはきゅっとそこを締め付け、快感を得ていることを示す。
「ここは誰を咥え込んでも喜ぶんだろ」
サンジのセリフに顔を上げたゾロだが、その直後の衝撃に思わず咥えていたものを口から放す。
「ああっ!」
サンジが指を3本まとめて突き入れたのだ。いきなりの挿入に体が強張る。
しかし、すでにゾロの中は熱く、易々とサンジの指を迎え入れた。
「へぇ、鍛錬後ってのはいいな。もうこんなに緩んでやがる。これだけ熱いんなら、すぐに俺のも入るんじゃねぇの?」
言いながら、ぐちゃぐちゃと態と音がなるように掻き回す。
「それとも、倉庫にしけこんで誰かとよろしくやってたのか?」
「!?なに、を……ぅあっ…!」
指を抜き、ゾロの尻をこちらに向けさせると、ゾロの唾液で濡れた己のものを一気に突き入れた。
「ふああああ!!」
びりびりとゾロの背中に電流が走る。構うことなくサンジは続けざまに腰を振った。
怒りを嫉妬を叩きつけるように激しく揺さぶり、まるで獣のようにお互い1度目の精を放った。
「はぁ……はぁ……っ」
「まだまだくたばるのは早いぜっ」
「あぅっ、や……まだ……ふあ…っ」
吐き出してなお、サンジのそれは硬度を保ったままだった。
こんなにも自分はゾロに情欲する。ゾロだってそのはずだ。それなのに………。
サンジは再び腰を揺らす。先程ゾロの中で放ったものが、ぐちゅっと音を立てる。
「なぁ、ルフィにもこうやって喜んでケツ振ってたのかよ」
「あ……?ル、フィ……?」
「昨日の夜はお楽しみだったんじゃねぇの?」
「………っ、あれは……!」
「なぁゾロ、お前は誰のモンだよ。お前は誰にでもそうやって嬉しそうに犯されんのかよ!」
「ちが……ちがうっ、あれは……っ、ああっ!」
容赦なく奥深くまで差し込み、何度も何度も抜き差しを繰り返す。
まるで自分を覚えこませるような行為は、ゾロに腰が砕けるほどの快感をもたらす。
「誰にも……誰にも渡さねぇ…!お前は俺のモンだっ!」
「あっ、ああっ、やっ、あん、あん、はあああん!」
「誰にもお前のそんな姿を見せんじゃねえ!」
「ひぁ、あ、あ、あ………またっ、イクっ、ああっ!」
「俺の前でだけ乱れろ、ゾロっ!!」
「あああああっ!!」
最後にがつんと一層力を込めて突き上げると、ゾロは体を震わせて達した。
その締め付けに、サンジも次いでゾロの中に白濁を注ぎ込んだ。
どくん、どくんと注がれるそれは、まるでサンジが体に染み渡っていくようだった。
「……おい、これ、外せ……」
息を整えながらも、背中越しにサンジに訴える。
「イヤだ」
「なぁ、別に逃げたりしねェからよ……」
頑なに拒もうとするサンジだが、ゾロに足掻こうという意志ながいことを察し、ネクタイを解く。
「あーあ……痣になっちまったじゃねェか……聞かれたらどう言い訳すんだよ」
「…………ルフィにか?」
「だから、さっきからルフィルフィってうるせェんだよ」
サンジは、今度は拗ねた子供のように口を尖らせ、ゾロを問い詰める。
「だってお前…………昨日、ヤったんだろ?………あいつと」
「………はあ?」
「だから…………セックス」
「………はあ!?」
「だってお前ら、昨日っ…………倉庫で……」
「おい、待て待て待て!誰が、いつどこで、何をしたって!?」
「だからっ!お前とルフィが、昨日、倉庫……でっ……!」
言いながら泣きそうになった。
さっきはめちゃくちゃに抱いてしまったが、ゾロの気持ちがルフィに向かっているのかと思うと悲しくなった。
それなら、いくら自分が引き留めようが抱こうが空しい行為になってしまうからだ。
「耐えられねぇよっ………ゾロっ……」
まるで恋する乙女が失恋したかのようだ。さっきまで怒り狂ってゾロを抱いた人間とは思えない程だった。
ゾロは、はあっと大きなため息を吐く。
「なぁサンジ、ちゃんと俺の話を聞けよ」
ゾロは、酷く扱われたものの、あまりに不憫なサンジを可愛く感じてしまった。
「俺は昨日の夜、たまたま倉庫で寝てた。それはいいな?」
「………ああ」
「すると夜中にルフィが現れた」
「………俺は夜中に、お前とルフィの声を聞いた」
「だから待てって。早まるな。ルフィが現れた。夜中に、倉庫にだ」
「………お前に会いにだろ」
「俺は、『たまたま』そこに居ただけだ。あいつが、わざわざ夜中に、そして倉庫に来る理由は何だ?」
「………………」
「………………」
「………倉庫?」
「ああ」
「夜中に?」
「お前の目を盗んで」
「………………」
「………………」
さあっと、サンジの顔から血の気が引いた。
「あああああああああああ!!!」
「馬鹿コック」
「あああんのクソゴムーーーーー!!!」
「お前うるさい」
「食糧狙いやがったのか!!?」
「気付けよアホコック」
今度は違う意味で怒り狂ったサンジに、ゾロは呆れた顔を向けた。
「じゃあ!」
「あ?」
「バレたら殺されるってのは!」
「お前、蹴るだろ?」
「あのイカガワシイ会話は!」
「……別にイカガワシくはねェ」
「何咥えさせられてたんだっ!」
「………肉の燻製?」
「ルフィのブツじゃなくて!?」
「何でそんなもん咥えなきゃなんねえっ!」
ぜぇはぁと息を切らすサンジに、ゾロは顔をしかめた。
「………あーその、バレたんなら仕方ねェよな……悪かった」
「………………」
「勝手に食って」
「………………」
「寝ぼけてたから止めらんなくてよ……」
「……も、いい……」
がっくりと肩を落としたサンジは、今日の俺は何だったんだと激しく落ち込んだ。
そんなサンジに、どうしたものかとゾロは考えたが、結局己のしたいようにした。
「なぁ……」
「あぁ?」
一気に疲れが来たような顔で振り向くサンジにゾロは笑いそうになるが、それはサンジの機嫌を損ねるだろうと思い、顔には出さない。
「仕切り直さね?」
「あ?」
「セックス」
穏やかな顔のゾロに、サンジは顔が染まるのを自覚する。
この顔に、弱い。
「なんか訳わかんねェうちに終わったし……」
そして、小悪魔のようににやっと笑う。
「気持ちよかったし?」
この顔には、勝てない。
今度はサンジが呆れたような顔になる。
「お前、やっぱりマゾ………」
「そういうお前は変態だろ?」
何だか知らないが機嫌がよさそうなゾロに、サンジは顔を近づける。
今にも唇が触れそうな位置で囁く。
「じゃ、お仕置きな?」
「あ?何で?」
「勝手に保存食食った罰」
「あー………ありゃ不可抗力だ」
「だーめ」
そっとゾロに口づける。手はゾロの腕の痣をなぞるように絡みつき、そのままゆっくりと体を押し倒した。
思いのほか長くなった…。シリアスと見せかけてギャグ→ほのぼの。
最後のギャグな言い合いがさせたかった。
夫婦漫才?
この後はラブラブな感じでゾロが責められ続けます。